居間の文庫本棚の、二段目・右から19番目。
「帝王死す」エラリー・クイーン 西田政治訳 HPB 昭和30年10月15日 初版 170円
古本で購入。小田急古書の市で、500円くらいだったような気がするが、定かでない。
この作品は、私は非常に驚いた。「クイーン、こんなの書くんだ」と思った。だって、完全に「007風世界」なのだ。
おっと、勘違いされては困る。
007は、「帝王死す」の刊行後に執筆されたものである。
よって、「帝王」がフレミングのパクリじゃないの、という想像ははずれである。
しかし、それにしてもこのスパイ大活劇はどうしたことだろう。
冒頭、クイーン父子は、アパートから何ものかに「拉致られる」のである。しかも敵は、そのためにプレジデント閣下さえ動かしているらしいのである。
目隠しして戦闘機に乗せられて、着いたのは地図にも載っていないという秘密の要塞島。
そこでは謎の実験が行われ、武器が製造され、島の「キング」は、各国の要人を操って戦争を誘発させている。(そうやって武器の需要を作る)
最後には、悪の根源「キング」は倒され、島は爆発炎上して、エラリーたちは巡洋艦で脱出し、エンディングである。
ね、完全に007でしょ。
おお、肝心な、エラリーの解かされる謎の話をしていなかった。
「キング」に殺人の予告状が届き、そのためにクイーン父子は島に連れて来られたのだが、なんと、キングの弟のユダ(すごい名前だ)があっさり「予告状は自分が送った」と告白する。
そして、壁の向こうにいるキングに、実弾の入っていない銃を向け、引き金を引くと、あら不思議。何のイリュージョンか、本当にキングは銃の無い密室で被弾するという、クイーンには珍しい不可能犯罪もの。
派手に始まった物語は、展開も派手になるのだなあ。
私には、クイーンが、なぜ突如としてスパイ大作戦風作品を書こうと思ったのかが、ユダのイリュージョンと同じくらい大きなミステリだ。
1937年刊行の「ニッポン樫鳥の謎」が、なぜ急にメロドラマ要素が入るのかと思ったら、女性誌に連載したための作戦だったと知り、大いに納得したことがあったが、「帝王」にも何か理由があるのだろうか?
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