悪魔の報復

居間の文庫本棚の、三段目・右から3番目。

「悪魔の報復」エラリー・クイーン 青田勝訳 創元推理文庫 1979年1月12日 12版 カバー欠にて定価不明

エラリー・クイーンのハリウッドシリーズの一つ。

ハリウッドのクイーンは、やたら軽い。そして、やたら恋愛要素満載である。
物語のヒロイン、ヴァレリーと、ウォルターの恋は、出会いから「あ、くっつくのね。事件に翻弄され、ちょっとすれ違いなんかも経ちゃったりして、結局は事件解決と同時に結ばれるのね」と推理するのに、シャーロック・ホームズの頭脳など、まったく必要としない。

クイーンは、ヒロイン視点で物語を書くときには、大抵ヒロインをひどい目にあわせる。これは、多分女性読者を引き込むテクニックなのだろう。かわいそうなヒロイン、受けるからね。
ヴァレリーも、ずいぶんかわいそうな立場に追い詰められるのだが、私の見たところでは、ほかのクイーン作品の「かわいそうヒロイン」に比べると、大分「お気楽そう」に見えるのはなぜなのだろう。

彼女は、恋人ウォルターが、ウォルターの父の死(殺人事件)に関わったのではないかと心配している。ウォルターは、事件の起こった時刻に、殺人の現場にいたのに、警察には「いませんでした」と嘘をついているのだ。
しかも、彼はそのとき、ヴァレリーの父のコートを間違って着てでかけ、そのためにヴァレリーの父が重要参考人になってしまう。それでも、ウォルターは「そのコートを着てたのは僕です」とは言わない。

ヴァレリーの父は、ウォルターのために、進んで身代わりになったのである。なぜなら、彼には動かぬアリバイがあり、いざとなったらそれを持ち出せば、いつでも釈放されると思ってのことだ。
父が時間をかせいでいるうちに、真犯人を突きとめよう。ウォルターは何も言ってくれないけど、無罪と信じるしかない。
しかし、そう言っているうちに、父のアリバイを証言してくれるただ一人の証人が、何ものかに連れ去られ……。
という具合に、普通のお嬢さんには荷が重い状況に追い込まれていく。が、にも関わらず、ヴァレリーは割りとあっけらかんとしている。
「ニッポン樫鳥」のエヴァの涙や、「ドラゴンの歯」のケリーの苦悩とは、比べものにならん。コメディだったら、このノリでもいいけど。
あっ。もしかして、クイーンはこれを喜劇のつもりで書いたのか?

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