居間の文庫本棚の、三段目・右から27番目。
「血も心も」エレン・ダトロウ編 小梨直訳 新潮文庫 平成5年4月25日 初版 720円
古書で購入。どこでいくらで買ったか不明。
収録作品は、
「死は快楽」ダン・シモンズ
「海はどこまでもぬれにぬれ」ゲイアン・ウィルスン
「銀の首輪」ギャリー・キルワース
「鈍刀で殺れ」ハーラン・エリスン
「静脈条虫」スコット・ベイカー
「ラザロ」レオニード・N・アンドレイエフ
「乾杯!」ハーヴェイ・ジェイコブズ
「砂漠のヴァンパイア、よみがえる」シャロン・N・ファーバー
「夜はいい子に」エドワード・アライアント
「飢えた目の女」フリッツ・ライバー
「ジャンフィアの木」タニス・リー
「闇の申し子」スーザン・キャスパー
「夜想曲」スティーヴ・ラズニック・テム
「死者にまぎれて」ガードナー・ドゾワ&ジャック・ダン
「その悲しみを……」チェット・ウイリアムスン
「ホログラム」ジョー・ホールドマン
「汚れ仕事」パット・キャディガン
以上、17編。
本書は、ずいぶん昔に買った。多分、我が家にネット環境が無かった時代だと思う。目当ては、「銀の首輪」で、誰かが良い批評をしていたのだと記憶する。「本の雑誌」あたりで取り上げられていたのだろうか。
私は、本書をだいぶ邪険に扱って来た。「大好きな吸血鬼本」としては、扱ってこなかったのである。
理由は、あまり好みじゃなかったという、シンプルなものだ。最初の一作「死は快楽」が、まず面白くなかった。今思うと、これはハリウッドで大金つっこんで映画化したら前例のない作品となるような気がしないでもないが、それでもいまだに好きではない。
この一作を読んだだけで、私は「はは~ん、このアンソロジーは私の路線ではないな」と、懸命にも察知したのだ。でも、「銀の首輪」だけは、最初から目当てにしていたので、これだけはとにかく読んだ。読んで、つまらないとは思わなかったが、やはりそれほど心つかまれなかった。
というわけで、私は本書を投げ出したのである。
吸血鬼本は、基本的には捨てない人間なので、それだけのために本書は本棚に収まっていた。でも、最初から最後まで通読されないままに、多分、20年以上たったのである。(つまみ食い的に、何作かは読んでいる)
しかしこのたび、「もう一度トライして、またダメだったら捨てる」と決めて読み始めて、なんとかかんとか最後まで読み切ることができた。
読んでみて一番気に入ってしまったのは、「ラザロ」だった。なるほど、ラザロは「よみがえってきた亡者」である。そうか、吸血鬼小説に、まだこんな手があったか!……とか思いながら読むうちに、吸血鬼なんてどうでもよくなってしまった。
そもそも、「ラザロ」に吸血描写は無い。血を欲する描写もない。ラザロは、ただ不死者として、あの者たちと同類なだけである。
吸血の欲求どころか、このラザロには何もないのだ。恐怖や悲しみを通り越して、虚無まで行っちゃった人なんだろう。キリストも罪なことをしたものよ、などと罰当たりなことを考えてしまう。マリアもマルタもラザロを見捨てる展開が、信仰心の篤い人には怒られるんじゃないかと思ったりする。が、物語としては、私は気に入った。
一作でも気に入ったものがある以上、本書はやはり手元に置いておくことにしよう。

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