居間の文庫本棚の、上段右から31番目。
「九尾の猫」エラリー・クイーン 大庭忠男訳 ハヤカワ文庫 1996年1月15日 22刷 640円
後期クイーン作品の中では、一番人気の作品かもしれない。私はそんなに好きじゃないけど。
「九尾の猫」は、エラリー・クイーンのシリーズには珍しく、9人もの連続殺人事件である。
読んで、私は非常に疲れた。私がここまで疲れたクイーン作品は、ほかには「ギリシア棺の謎」だけである。
「九尾」は、エラリーが、名探偵としてのアイデンティティを自ら問う物語であるのだが、考えたら「ギリシア」も、名探偵として誕生しようとしているエラリーのアイデンティティに関わる物語である。クイーンは「名探偵そのもの」について迫ろうとするとき、深くて重い謎による物語を紡ぐ作家のようだ。
私は、疲れこそすれ、「九尾」の重い謎は決して嫌いではないのである。ただ、傑出した作品だとは思えないだけだ。もっと良いやつがいろいろあるじゃん、と思う。
そして、終盤で、精神分析医に「君は前にも失敗した。今後もするだろう。それが人間の本質であり、役割だ」と言われてエラリーが自らの暗箱を抜ける描写なんぞも、なんか浅薄に見えるのである。
いや、浅薄にしかとらえられないおのれ自身が浅薄なのだろう、きっと。
要するに、本作を楽しむには、私は色々と足りない人間なのだろう。死ぬまでには、足りないものを補って、世間様の言うような「傑作」と思える日が来ればいいと思う。
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