世界名作推理小説大系別巻1 Xの悲劇/Yの悲劇

ミステリ

居間の文庫本棚の、二段目・右から10番目。

「世界名作推理小説大系別巻1 Xの悲劇/Yの悲劇」エラリー・クイーン 鮎川信夫訳 東京創元社 昭和35年8月20日 初版 300円

母の本棚から盗んでいただいてきたもの。
「X」「Y」は、名作である。これだけの名作を、なかなか二編集められないような名作である。

日本では、とにかく「Y」の人気がものすごい。(乱歩先生のおかげだろうか?)大抵の人気投票で、ほとんど一位を取ってしまうほどである。
何を隠そう、うちの母も「Y」はすべてのミステリの頂点であると言い切ってはばからない。
母は、ミステリファンとしては珍しく、人気投票とか、ランキングとかが嫌いな人間である。人によって感性は違うのに、総合的な順位を付けるなんて、無意味で滑稽至極だと言うのだ。
その人間が、「すべてのミステリの上に君臨する」と断定する「Y」の力は恐ろしい。母の気に入りのシーンは、目と耳が不自由な女:ルイザが、隣に寝ている母親を殺した犯人の顔に触れるところ。
ルイザは、「犯人の頬はすべすべしていた。甘い香りがした」と証言する。

私は、「Y」を中学生くらいのときに、初めて読んだ。
犯人が誰かは、知っていた。(知らずに読むことができる幸せ者は少なかろう)名作の中の名作であることも、知っていた。
しかし、私は、「Y」を大して良いとは思わなかった。なんか暗い話しだなーと思っただけだったような気がする。

それが、20歳を過ぎて読み返してみたら、これが面白いのだ。
私が、大人になってから本当に心奪われたと言える読書は、5回くらいしかないのだが、「Y」はその中の一つである。(ちなみに、5回のうちには、漱石の「虞美人草」が含まれている。私にとって、「Y」は、漱石と同レベルなのだ)

ミステリとしての完成度も然りながら、物語として優れているところが素晴らしい。
私の好きな、ものっすごい怖いシーンを紹介しよう。
目と耳の不自由なルイザを、犯人が殺そうとするシーンがある。
犯人は、ルイザに自分の姿が見えないことを知っているから、大胆にも窓の外からひょいっと入ってきて、ルイザの目の前に置かれているバターミルクに毒を入れる。
本人の目の前で、ダーーっと入れているのである。
そして、犯人は、入ってきた窓からひょいっと出て、外から、ルイザがミルクを飲むのをじっと観察する。
実は、名探偵:レーンが毒を無害なものにすりかえていて、ルイザは死なずに済むのだが、「殺せなかった」ことを知った窓の外の犯人の反応が、本当に怖い。
私は震え上がった。クイーンて、こんな怖いこと書ける作家なんだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました