まずは、居間の文庫本棚の最上段からご紹介。
「華日記」早坂暁著 小学館文庫 760円 1998年1月1日 初版
新刊で購入した。文庫になる前は、新潮社からハードカバーで出ていた。千いくらで買えたはずなのだが、なんとなく買わずにいたものが文庫で出たもんだから、すばやく買った記憶がある。
内容は、戦後すぐの昭和30年代から40年代くらいをメインに、いけばな界の動向を、ほぼノンフィクションで、克明に記した物語である。
「ほぼノンフィクション」と書いたのは、たまにこれを完全なノンフィクションと考えて、資料的に引用する方がおられるからである。
ものすご~く厳密に言うと、具体的な年代に何点か事実と異なる点があるのだ。
また、「トクシュな世界の内幕披露」的な側面もあり、かなりドラマティックに描かれているので、このまま本当にあった話だとは思うべきではないだろう。要するに、ちょっと盛っている疑惑を持つべきだと思うのだ。
しかし、早川氏の描いていることは、基本的に事実を基にしている。おそらく、今後このような書物が書かれることはあまりあるまいと思われる。
読んでいて、池坊の山本総理事が、あまりに悪者に描かれているのに感心した。ここまで書いちゃって、よく怒られなかったねえ。戦争中、内閣府の人間と渡り合い、金で片をつけるところなんて、いっそカッコイイくらいだ。
私は、自分が草月流のいけばなを子供の頃から習っている関係で、草月流の二代目家元:勅使河原霞氏が、夫の浮気に気づくシーンなんかは、「ここを描くか!」と思ってしまう。ま、ゴシップ小説としても楽しめるようになっているわけだ。
そのような、「流派の頂点」の人々と、対照を成す形で語られるのが、流派を否定する孤高の天才:中川幸夫である。
流派の集金システムを持たない中川氏の、創作活動と、同じ理想に向かって歩く奥さん(最後まで正式な結婚はしなかった)との生活の様子が、非常に温かい視点で描写されるのが興味深い。
私は、263P10行目の中川氏の言葉の、余りの誠実さに震えた。
こんな本出して、いけばな界の人たちは怒らないのかと、読んでいるうちに心配になるような描写を多々含むのであるが、この本、取材に、代表的流派の家元がほとんど協力しているのである。草月流は資料協力までしている。早坂氏は、いけばな評論の執筆もしていた経歴があり、各流に顔がきくのだそうだが、それにしても、書く方も協力した方もスゴイ。
いけばなに興味が無い人でも、ゴシップ好きな人なら読んで楽しいと思う。オススメ本である。


コメント
いいですね。
私もこういう風に本を紹介したいものです。
何より、読むことへの愛情が感じられます。
Moriwakiさん
「ふるほ日記」の管理人さまに、このようなお褒めの言葉をいただけたら、嬉しくて踊ってしまいます。
たまたま、このジャンルは人より詳しいので、多少アツク語れるのであります。