ハートの4

居間の文庫本棚、上段右から6番目。

「ハートの4」エラリー・クイーン 青田勝訳 創元推理文庫 450円 1984年4月6日 9版

エラリー・クイーンの、ハリウッドもの作品の一つ。
ハリウッド映画にまつわる殺人事件である。
本作では、エラリーはなじみのNYを離れて、脚本執筆のためにハリウッドを訪れている。そこで、大物俳優&大物女優のカップルが、新婚旅行のために飛行機で飛び立って、そのまま帰らずに死体で発見されるのである。

登場人物は、ほとんど「女優」「エージェント」「プロデューサー」など、映画風味満載である。本作は、クイーンが、マジでハリウッドの映画屋さんに作品を売り込むことを見込んで書かれたものらしく、絵的に見たら面白いと思われる要素がたっぷり。そして、恋の要素もたっぷり。

初期エラリーは、ホームズ型のベタベタ恋愛NG探偵であったが、この作品では、何と燃えるような恋に落ちてしまう。ハリウッドの女性ゴシップ記者:ポーラ・パリスに一目ぼれし、恥ずかしいことに、それを隠そうともしない。
最後のシーンでは「それはつまりやることだ!」とか叫んでしまっている。(やるって、接吻までだけど)
そんな、エラリーは私のものなのに!(←暴走してすみません)

いやまあ、ちょっと落ち着こう。はーーーーー。

はい、失礼しました。で、ミステリ的内容に戻ると、この犯人、かなりめんどくさいことを考えている。将棋の名人みたいに、何十手も先を読んで行動しているのである。非常にクイーン的な犯人といえるだろう。
普通、めんどくさいことを考える犯人というのは、読者の胸に「そんなことしなくても、○○さえ殺せばすむのに」とか、「○○さえ盗めばすむのに」などの思いを起こさせるものだが、えらいもので、「ハートの4」の犯人は、「簡単に○○さえすれば済む」という方法を、作者が封じてしまっている。さすがはクイーン! かくして、推理自慢の読者は、将棋の名人級の犯人を追い越さなければ謎を解けない羽目に追い込まれるのだ。
初期のクイーン作品に比べると、本作は非常に軽薄な印象を受けるが、中身はきっちりクイーン風味で決めてある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました