居間の文庫本棚の、二段目・右から6番目。
「クイーン談話室」エラリー・クイーン 国書刊行会 1994年7月25日 初版 2200円
クイーンとしては珍しいエッセイ集である。
このエッセイは、クイーンのうちの「編集業務担当」のダネイによるものらしい。
ダネイの文というのは、どれもそうなのだが、「何が悪いのかよく分からんが、どうもなんとなく読みにくい文」であって、「クイーン談話室」も例外ではない。(この事実は、ダネイ自身、身にしみて分かっていたろう)
しかし、一文の長さが短いせいか、ほとんど苦労しないで一冊読み終えることが出来る。
中でも、「誰が忘れるでしょうか」の文は、名文と呼んでも差し支えあるまい。人の魂を引き込む、迫力のある文章だ。
「誰が忘れるでしょうか」は、ダネイ少年が、ホームズ物語に出会ったときのことを書いた文である。
ミステリ好きならば、共感を持たずにこの文を読むことは、ほぼ不可能だ。
私だって、忘れはしないとも! 私だって、霧のロンドンの夜に、ハンサム馬車に乗ったさ。ホームズが拡大鏡で足跡を調べ、煙草の吸殻を拾うのを見ていたさ。誰かが否定するなら、してもいい。ダネイが分かってくれるんだから、私はそれでOKだ。
おそらく、ミステリ好きでなくたって、「誰が忘れるでしょうか」に共感を覚える読者は多いだろう。なぜなら、この一文は、素晴らしきものを自分で発見し、それと一体になる喜びを語った文だからである。
コメント