居間の文庫本棚の、三段目・右から13番目。
「クイーン警視自身の事件」エラリー・クイーン 青田勝訳 ハヤカワ文庫 1995年9月15日 12刷 560円
エラリー・クイーンのシリーズでは、脇役にあたる(初期の頃は副主人公格だが)クイーン警視が名探偵となって解決するミステリである。
いやー、初めてこの作品の存在を知ったときには驚いた。短編ならともかく、長編なんだもん。こんなきっちりした番外編をよく書いたなあと思い、感心してしまった。
この作品は、見る人によって「ハーレクイン的」とか「ハードボイルド」とか、色々言われるが、要するに「純本格」とは言いがたいものがある。
作品の設定では、警視はすでにNYPDを退職している。この時点で、「タイトル嘘じゃん」(正確には「クイーン元警視」ですな)という声もあがるが、まあそこは許そう。
警視とジェシイのカップルが気になって集中できないという声も聞くが、私はそこは気にならん。
気になるのは、全体的にうっすらとご都合主義なこと。エラリーだったら、これは無いと思うのだ。
そもそも、クイーンは、この作品のプロットを、はじめから「警視用」として準備したのだろうか。
エラリー用にストックしていたプロットを、「これ警視用にしちゃえ」と言って流用したのだろうか。作品を構築する過程の、どこで「うっすらご都合主義」が発生していったのか、ぜひとも知りたいところだ。
上にも書いたように、警視は、ジェシイという女性と、この作品で知り合う。
そして、えっと、プロポーズされます。彼女から。
逆プロポーズです。積極的だのう。
警視の元奥さんで、エラリーのお母さんである人は、何十年も前に亡くなっているから、二人さえよければ、結婚には何も問題はない。
しかし、花束を片手に女を訪ねる警視の姿を拝むことができるとは、私は思っていなかった。あの警視がなあ。
その女への接し方が、誠実そのもの。そして、まだ無自覚な自分の気持ちを、ちゃんと相手に伝達できるという(息子はこれが下手だ!)ある種の天然タラシ的な能力まで披露してくれている。
クイーン作品のなかで、これほどすがすがしい愛の生育過程は、ほかに見当たらない。
成熟した大人の恋にもかかわらず、なぜか少年と少女の恋を思わせる二人の姿は、なかなかいい感じだ。
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