※処分箱行き
「ジョン・コリア奇談集Ⅱ」ジョン・コリア 中西秀男訳 サンリオ文庫 1984年11月30日 初版 540円
新刊で購入したはず。
収録作品は、
「風変わりなプレゼント」
「火の中の映画」
「奇術師フレイザーの運命」
「葦毛のウマの美人」
「異本『アメリカの悲劇』」
「アンリ・モーラーのステッキ」
「死者について語る」
「ロマンは亡びず」
「魔女のくれた金」
「自殺志願」
「猛禽」
「マドモアゼル・キキ」
「みどりの思い」
「『鋼鉄ネコ』」
「悪魔につかれたアンジェラ」
「ナツメグをほんの少し」
「地獄の途中まで」
「湖畔の出来事」
「カエルの王子」
「リスの目は光る目」
「『死の天使』」
以上、21編。
特に目当ての作品は無く、コリアだから買ったのだと思う。その結果、21編の中に、お気に入りは無い。
じゃあなんで処分しないのかというと……やっぱりコリアだからかな。特に好きな1編もないのに、私はなんとなく本書を嫌いになれないのだ。(追記:結局処分箱に入れることにしました)
というわけで、本書について書けることはあまりないので、以前に別サイトで公開していた「みどりの思い」について書いた文を、ここに再録しておこうと思う。
再録:【ジョン・コリア「みどりの思い」……その蘭は、品種不明】
「その蘭」は、名前の分からぬ謎の蘭です。蘭マニアのマナリング氏がどこかから入手したもので、「誰も見たことの無いような薄気味悪い様子」をしています。まあ、そんな薄気味悪いものなど栽培しなくても、と思いますが、そこがマニア根性ってやつでして、マナリング氏は珍しさに興奮し、温室の中で大切に育て始めたのでした。この蘭は、どんな蘭にも類似していない、と記されています。
ほかの物語でもそうですが、架空植物というものは、どうも作家が、あまり詳しくその姿を描写しないもののようです。
読者の想像に任せたほうが良い、ということなんでしょうか。あるいは、「無いもの」を文章で説明することは難しい(絵とか、映像であれば具体的に示せますが)ということなのでしょうか。ただし、この小説では、「その蘭」のことを、マナリング氏の従妹のジェインが「ただのホップよ」と言っています。ホップ(ビールに使われる、あれね)に似ている蘭というのが、私にはあまり想像できないのですが、要は蔓性だってことのようです。参考までに、下のホップの画像などご覧ください。

この蔓がね、大変なことをするんです。マナリング氏はこの蔓を、「何かの器官が退化した痕跡だろう」などと推理していますが、ぜんっぜん違うんですねえ。
育て始めて間もなく、マナリング氏は、「その蘭」の花がちっとも美しくないことを知ってがっかりします。つぼみはたくさん付いたのに、大きさも形も、まるで蠅の頭みたいな花だったんです。
ところが、もうしばらくすると、俄然大きなつぼみがもう一つできてきました。それが咲いたら、なんと、猫の頭そっくりだったんです! 勘の良い方はそろそろお気づきでしょう。
まだわかんない方のためにヒント。猫の花が咲く少し前、ジェインの飼い猫が姿を消しているんですよ。ね? 分かった?
そうこうしているうちに、従妹のジェインも謎の失踪をしてしまいます。ジェインそっくりの花も、いずれ咲くことになるのです。そして、マナリング氏の背後にも、じわじわと緑の蔓が忍び寄る……。
この小説の面白いところは、作者コリア独特の、ブラックでありながら奇妙にとぼけた味の文で、主人公が蘭に食われた後の心情までを描いているところです。
「食われちゃいました、終わり」じゃないんですねえ。「花になったマナリング氏」に、読者は会えるのです。
ただ、この物語は、ハッピーエンドではありません。
だって、怪奇小説ですし、なんたって、ジョン・コリアの作品ですから。


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