フォックス家の殺人

居間の文庫本棚の、三段目・右から6番目。

「フォックス家の殺人」エラリー・クイーン 青田勝訳 ハヤカワ文庫 1994年2月28日 10刷 620円

クイーンの、ライツヴィルものの中では、私は気に入っている方である。(ライツヴィルものを基本的に好きじゃないと言ってるようなものじゃな)

この作品では、エラリーは12年も前に起こった殺人事件のために呼ばれる。
エラリーに捜査を依頼したのは、事件の犯人として逮捕され、収監されている男(ベイアード)の息子(ディヴィー)の妻(リンダ)。
12年前に殺された人物は、ディヴィーの母。つまり、ベイアードは奥さんを殺した罪で捉えられているわけだが、犯行を完全に否認している。
少年時代に、母が死に、父を逮捕されたディヴィーは、心に深い傷を負い、そのために、自分の妻:リンダを無意識のうちに傷つける行為を犯してしまう。
リンダは、夫の心の傷を取り除き、義父を無実の罪から救い出そうと、エラリーに事件の真相を洗いなおすことを依頼する。

私は、自分がこの作品の何を好きなのかと、我ながら長いこと疑問に思っていた。
何となく、人間の描き方かな、と思っていた。メインの謎解きが気に入ったのではないことはたしかだったから。(謎解きらしいのは、ジュース実験くらいだもんね)
最近になって、「あ、悪意の人がいないからかも」と思うようになった。この作品は、夫婦の間の色々&ごちゃごちゃは描かれるけど、殺人の計画を練らずにはいられないほど、誰かを憎んだ人間は登場しない。
だから、最後のシーンには、ほかの作品には見られないほどの希望の色がある。

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