書斎の本だな(小)。
「燠火」マンディアルグ 生田耕作訳 白水Uブックス 1994年11月30日 3刷 960円
マンディアルグの短編集。
収録作品は、
「燠火」
「ロドギューヌ」
「石の女」
「曇った鏡」
「裸婦と棺桶」
「ダイヤモンド」
「幼児性」
以上、7編。
この中では、「ダイヤモンド」が特に好きである。
「ダイヤモンド」を最初に読んだのは、たしかこの本ではなかった。雑誌掲載のものを読んだような気がするが、定かでない。
私は、「ダイヤモンド」を読んだとき。「こりゃあいい」と思ったのだ。しかし、「マンディアルグにしてみれば、ひょっとすると妥協した作品かも?」とも思っていた。
なぜなら、マンディアルグにしては、物語性がはっきりしているからだ。(台詞から始まるマンディアルグ作品てほかにある?)そして、主人公サラの造形は、いかにもマンディアルグ風だが、マンディアルグにしては、分かりやすすぎる感が無いでもないのだ。
そんなわけで、黒澤が「生きる」を嫌いなように、チャイコフスキーが「くるみ割り人形」を嫌いなように、マンディアルグも「ダイヤモンド」が嫌いかもしれないと思っていたが、要らぬ心配であったようだ。
本書のあとがきに、「作者気に入りの会心作」と書いてある。
「ダイヤモンド」は、「燠火」や「ロドギューヌ」と違い、明確な幻想小説である。
宝石鑑定していた娘が、ふと気づいたらダイヤモンドの中に入り込んでおり、そこでであった不思議な男に、「自分と君との間に生まれる子供が救世主になる定めだ」と言われ、彼女は彼を受け入れる。
やがて、気がつくと、彼女はいつもの鑑定室で気を失っていたことが分かり、「さては夢?」と思うが、件のダイヤモンドをルーペで見ると、内部に一点の赤い染みが……。しかも、染みは日に日に大きくなっていく。
主人公サラはユダヤ人なのである。ユダヤの女の誇りが、彼女に不思議な男を受け入れさせたのだ。
救世主は、いつか再びユダヤの地に現れるのだろうか。


コメント